夫婦間不純ルール
これがただの恋人同士という関係だったならば、自然消滅という形の終わり方もなくはない。だけど私たちは結婚している、こうして同じ家に住んでいて二人の関係が勝手に終わるという事は無いのだ。
両親の反対を想像すれば私が実家に帰るという手段も使えない。お互いに相手を避けて生活しながら、そうして時間だけが無意味に過ぎていく。
「こういう時は私の方から行動に移すべきなの? でも、それは……」
この前の発言を岳紘さんはどう受け取っただろう? もし私が別れることを望んでいると思われていたら、彼にそんなつもりはなかったと話しても言い訳に聞こえるかもしれない。
私自身、本音を言えばこれからどうすればいいのかまだ分からなくて。
『……俺が協力しましょうか?』
ふと頭に浮かんだあの時の奥野君の言葉。本気にしていたわけではないけれど、もしも今の状況を変えることが出来るとするならば。
「いいえ、奥野君を巻き込むのは間違いだわ。彼には彼の家庭があるんだもの」
奥野君は自分の事をあまり話してくれないが、奥さんの事を何とも思っていないわけじゃないと分かっている。私と同じようにもどかしい感情を抱えたままの夫婦生活を送っているのだと、そんなふうに想像して勝手に思いこんでいた。