夫婦間不純ルール
「奥さんが成功して人気が出る事は嬉しいんです、本当に良かったと思える。ですが、それと同時に彼女にとって俺は今必要なのかとも思うようになりました」
「え? でもそれは、夫婦関係とは関係ないんじゃないの」
奥さんの仕事が成功したとしても、それは夫である奥野君の協力があってこそだったはず。それなのにどうして彼は奥さんに必要とされてないと感じたのだろうか。
けれど自分に置き換えると何となくわかるような気がした。私も夫に必要とされているかと聞かれれば、きっとその答えは「NO」だから。
……だって岳紘さんに、私が必要な理由が何も無いもの。
「忙しい彼女を支える協力的な夫、という意味では必要だったかもしれません。でも、それは俺でなくても良かったような気がして。今ならきっと妻に協力して支えたいという男性はたくさんいるでしょうし」
「ずっと奥さんとのことを、そんな風に考えてたの? それを伝えようとはしないで」
そう出来なかった理由は何となく分かるのに、それでももどかしく感じるのは何故だろうか。奥野君の奥さんが必ずそう考えてると決まったわけではないのに、彼の中では答えが決まってしまってるかのようで。
それが自分と岳紘さんとの姿に重なって、余計にもやもやとした感情を持て余す。
「……ええ、雫先輩と同じ理由です。妻から嫌われるというか、もう必要ないと言われるのが怖かったからかもしれない」
「奥野君……」