夫婦間不純ルール
今回のことで責められるべきなのは自分ではなく、岳紘の方のはずなのに彼は随分強気だった。他の女性に惹かれ自分にとって都合の良いルールを、妻である私に押し付けてきていると言うのに。
それなのに離婚をすると言い出した私をまるで脅しているかのような発言まで、信じられない気持ちになった。
「そうなった場合、君のお父さんが離婚を認めてくれるとは思えない。別居も同じだ、世間体を気にする俺達の両親はそんな事を許してはくれないだろう」
「……だから、我慢して貴方との結婚生活を続けろと?」
私の父は夫の言った通りの反応をするに違いない、長年実の子のように可愛がってきた岳紘さんの事を疑わないだろうし、こんな言い方をされたら私の我儘だと思われるに違いない。
彼と結婚して専業主婦になった私では、すぐにこの家から出て一人で暮らしていくことも難しい。
「君は君で好きなように俺以外の相手と恋愛して楽しめばいい。俺たちがこれからもずっと夫婦と言う形であればそれで構わない」
「……岳紘さんは、それを苦しいとは感じないのね」
少なくとも私は、悲しくて胸が潰れるような痛みに襲われていると言うのに。表情を少しも変えずに話を続ける夫、この人はずっとこんなにも冷たい人だっただろうか?
……夫婦としてのふれあいはなくても、妻に対する優しさはいつも感じていたのに。
「……苦しい、か」
それだけ呟き胸に手を当てる、そんな夫の様子をただ黙ってみていた。少しでもその心の奥に痛みを感じてくれたらいいのに、と願いながら。