夫婦間不純ルール
気持ちはよく分かる、私も同じようにずっと夫からそう言われるんじゃないかって怯えていたから。
結婚前は籍さえ入れてしまえば、そのうちに岳紘さんも自分だけを見てくれると信じてたけれど現実は違っていた。それどころか、自分に都合の良いルールを作って妻の私とは別の人を愛してる。
悲しさだけじゃない、悔しさだってこの胸をギリギリまで支配してるのに私はまだ夫に何も言えてない。こんなにも、こんなにも私は苦しいのに……
「ねえ雫先輩、泣かないで」
「え……私、泣いてなんか」
そう言いかけて自分の瞳から涙が零れ落ちていたことに気付いた。透明なその雫は頬を伝ってそのままテーブルへと真っ直ぐに落下していく。
今辛い話をしていたのは奥野君のはずなのに、その話に共感して私の方が涙を流してしまったらしい。
「ねえ、雫先輩。もし先輩が俺に頼るのがどうしても嫌なら、お互いが相手を慰めるって言うのはどうですか?」
「なによ、それ……」
「ああ、変な意味じゃないです。ただ辛い時に慰め合える相手、そういうのって欲しくないですか?」
意味が分からない、そう思うのになぜか私はすぐに「必要ない」とは言えなかった。その言葉が私や奥野君が一番恐れている言葉だと分かっていたからかもしれない。
そして、私の出した答えは――――