夫婦間不純ルール
Rule 10
「何か良いことでもあった? メッセージもよく送ってくるし電話でも明るいわよね、最近の雫は」
「そう? 自分ではいつもと変わらないつもりだったけど……」
良く晴れた週末、お気に入りの喫茶店で親友の麻理とお茶をしている。
本当は彼女の言っていることに心当たりがあったけれど、それは言えないから適当に誤魔化した。もし話せば反対される、それくらいは私にも分かってる。だけど、それを承知で私はあの時の答えを選んだのだから。
「嘘ばっかり! メールや電話だけじゃないわよ、今だってそんなに肌の調子も良くて生き生きしてるじゃない。何があったのか吐いちゃいなさいよ~」
「ヤダ、何もないってば! 駅前の新しいエステに通いだしただけ、それだけよ」
これは本当だった。あの日、奥野君と約束を交わしてから何となく自分磨きをしたくなってそのまま駅前のエステに予約を入れた。どうしてか分からないけど、あの日を境に私はどんどん前向きになってきてる。
それは悩みだった複雑な夫婦関係にも変化をもたらして……
「もしかして、旦那さんと上手くいってるとか? そう言うことは親友の私にはちゃーんと報告しなきゃダメでしょう!」
「だから、そういうのじゃないって言ってるのに」
私と岳紘さんの県警が劇的に良くなったわけじゃない。でもあれから少しずつ二人の間にあった壁みたいなのが、薄くなっているような気はするのだ。
もしかしたら、次に何かあった時の逃げ場が出来たからかもしれない。