夫婦間不純ルール
「……え? 新しい取引先の営業部長さんにホームパーティーに誘われたの、それも妻を同伴でって?」
「ああ。ホームパーティーは来週の日曜なんだが、先に雫の都合を聞いておこうと思って」
まさかそんな話をされるとは思わなかった。いつもは仕事先の付き合いでも妻の私を連れていくことなんて絶対にしない人なのに。
新しい取引先がどこの企業かは知らないが、岳紘さんが私に聞いてくるという事は結構大きな取引相手に違いない。それならば妻として協力するのが当然だとは思うのだけど……
昼間の麻理との会話が頭によぎる。お互いが必要としあえる夫婦になれたら良いという言葉を、今こそ実行するべきなのかもしれないと。
「その、私が一緒に行ったほうが岳紘さんは助かるわよね?」
「ああ、そうだな。その営業部長はかなりの愛妻家らしく、彼のホームパーティーには誰もが夫婦で参加するらしい」
その言葉に胸の奥がズキンと痛む、つまり私は周りに合わせるためにお飾りで付いていけばいいという事なのかと。岳紘さんの役に立てるかと思ったのだがそれは私の勝手な希望で、現実はただそこにいるだけでいい置物のような存在。
……これじゃあ、私が望むお互いを必要としあう夫婦には程遠い。そんな私の思いに気付くこともなく、岳紘さんは話を続ける。