届かない思い


学校を出た。もうだいぶ暗くなっていた。私は、歩いて10分で家に着く。すごく近い。でも、この学校は進学校だから、入れる人も限られてくる。そこで私は生徒会長をしている。だから、テストは1位でなければならない。昔からそれがこの学校の暗黙のルールだった。なのに私は数学がとてつもなく壊滅的に苦手だった。というか、大嫌いだったのだ。今は2年だが、1年の初めの頃、比較的簡単なテストの時、結構高得点の中、数学だけ赤点ギリギリだったのだ。どんだけ、頑張っても数学だけ、全く上がらなかった。

1年の冬、数学が伸び上がらず悩んでた。その頃なぜだか、私は頭のいい優等生と周りから思われていた、だから数学ができないだなんて言えなかった。そんなある日、中庭で1人で昼食を食べながら数学の教科書を見ていた時、急に声をかけられた。知らない男の人だった。

「そんなに教科書とにらめっこしても数学は解けないぞ。んっ?その問題が解けないのか?」

「えっ?」

「教えてやる、だからそのパンくれないか?」

「えっ?これですか?」

それは私が購買で買ってきたパンだった。しかも購買で余っていたパンだった。その問題は絶対に学年末テストに出ると言われていた問題だった。私は、これはもう一か八か聞いてみるかと思い、

「お願いします」

「あいよ」

とスラスラと教えてくれた。

「でこうなるんだよ。わかったか?まぁ、終わったから、これもらうな。じゃあな〜」

私は、こんなにわかりやすく教えてもらったのはじめてだった。お礼を言おうと思い声をかけようとしたら

「あお〜、〇〇先生が呼んでたよ〜」

「まじか、サンキュー」

と言って走っていった。

(てか、あの人誰なんだろ?あおって呼ばれてたけどセンパイ?それとも同い年?いや、先生かも?)

そして私は2年生に上がり、始業式の日

みんな席につき、先生を待ち遠しいと心待ちにしてる中、その人が入ってきた。

ガラッ

「みんな、遅れて悪い、今日から1年間、お前たちの担任をする青野葵だ。どうやって呼んでもいいぞ、なんなら先生って付けなくてもいいからな、担当は数学だ、よろしくな。」

それが、私たちの再会だった。

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