異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます
42 神殿へ
リュミイール教は、女神リュミイールを祀り、最も多くの国で信仰されていて、それぞれの国で絶大な勢力を誇っているという。
話を聞いていると天照大御神のような感じだ。
馬車に乗って辿り着いた神殿は、ギリシャの神殿のような雰囲気で、外国のドラマに出てくる裁判所のように広い階段を登っていく。
「それでは夕刻にお迎えに上がります。着きましたらあちらの門番に言付けを頼みますので、それまで中でお待ち下さい」
御者が腕を伸ばして示した方を見ると、見張り小屋のような建物が階段下にある。貴族など馬車で神殿を訪れた者は、ここで取り次ぎを行うそうだ。
「ありがとう。ではよろしくお願いします」
レインズフォード家からここまでは馬車で半時間程。馬車の時速がわからないので、徒歩でどれくらいかかるのかはわからない。それでも歩けば軽く一時間はかかるだろうし、何度か道を曲がってきたので、歩いて帰るのは無理そう。
御者が門番に声をかけて、私にこちらへと言うのに付いていく。
広い戸口は昼間は常に開け放たれていて、大勢の信者と覚しき人々が詰めかけている。
「いつもこんなにたくさんの方が参拝されているのですか?」
「いつもはこの半分ほどですが、聖女様が召喚されたという噂が広まり、皆一目でも聖女様のお姿を拝見できないかと詰めかけているのです」
このたくさんの人たちが財前さんに会うために…
それだけここの人たちが聖女の召喚を心待ちにいていたということになる。
門番に連れて行かれた入口は、信者の人たちがいた正面扉から少し横にずれた場所にあった。
「先生!」
「財前さん」
「待ってたんです、さあ、入ってください」
入口で名前を告げて案内された部屋に行くと、財前さんが駆け寄ってきた。
二日ぶりに再会した彼女は変わらず元気だった。
白のワンピースと金糸の綺麗な刺繍のローブを羽織っている。
彼女に与えられた部屋は広々としていて、白と金を基調とした家具で統一されていた。
「何だか本当に聖女様みたいね」
「みたいではなく、本当に聖女なんですよ。まだ実感はありませんけど」
「財前さんが思った以上に元気で安心したわ。あ、これお土産です。昨日作ったの」
財前さんと横並びに座ってから、昨日作った薔薇ジャムと砂糖漬けを渡した。
テーブル並べられていた食事は、神殿での食事と聞いてシンプルなものを想像していたけれど、肉もあってレインズフォード家で出されるものとそれほど変わらない。
「え、これ先生が作ったの?」
「ちょうどたくさん薔薇をもらったから」
「わあ、嬉しい、きれい」
喜んでもらえてほっとする。
「こっちの食べ物って、何だか地味というか、野菜がないですよね」
財前さんも目の前に用意された食事を眺め、私と同じことを言う。
「お肉がご馳走だと思っているみたいで、繊細さも何もないわ。ちっともばえがないもの」
「そうね。野菜は庶民の食べ物らしくって、ないことはないのだけど、高貴な人の食卓にはのぼらないようね」
「あ、やっぱり」
「だからお世話になっているお屋敷の厨房にお邪魔させてもらって、色々と料理させてもらったりしたの」
「ええ、そんなことを…どんなの作ったんですか?」
「肉はミンチにしてハンバーグにしたり、トマトソースを作ったり、醤油や味噌もあったから生姜焼きとか味噌漬けなんかもね」
「うう、美味しそう…食べたい。先生は作れるんですね。羨ましい」
神殿で用意してもらった料理を食べながら言うことではないのかも知れないけど、彼女の気持ちもわかる。
私よりずっと良いものを食べてきた財前さんなら余計にそう思うのだろう。
「じゃあ、何か作って持ってくるわ」
「ほんとですか? 嬉しい! あ、でも明日から潔斎の儀式だから、それが終わらないと」
「潔斎の儀式って、大変なの?」
アドルファスさんも儀式の内容はわからないと言っていた。
「どこかに籠もってひたすら祈りを捧げるそうです」
「苦しいことや危険なことはないのね」
「それはなさそうです」
「ひたすら祈りを捧げるというのも大変そうだけど、危ないことはなさそうで安心したわ」
「心配してくれてありがとうございます。でも、私のほうこそ、先生のこと心配しているんですよ。私が巻き込んだようなものだし」
「財前さんのせいではないわ。それに私なら大丈夫よ。思ったより自由にさせてもらっているし、皆さんとても親切だから」
「でも、先生を連れていった人…」
そう言えば、財前さんはアドルファスさんのことを気味悪がっていた。だから余計に心配なのかもしれない。
「あの仮面には理由があって、よく知ればいい人よ」
キスされたことは言えないけど、アドルファスさんもレディ・シンクレアも私のことをとても大切にしてくれている。
「それならいいんだけど…その人のことで、私も色々噂を聞いたから…」
「噂?」
話を聞いていると天照大御神のような感じだ。
馬車に乗って辿り着いた神殿は、ギリシャの神殿のような雰囲気で、外国のドラマに出てくる裁判所のように広い階段を登っていく。
「それでは夕刻にお迎えに上がります。着きましたらあちらの門番に言付けを頼みますので、それまで中でお待ち下さい」
御者が腕を伸ばして示した方を見ると、見張り小屋のような建物が階段下にある。貴族など馬車で神殿を訪れた者は、ここで取り次ぎを行うそうだ。
「ありがとう。ではよろしくお願いします」
レインズフォード家からここまでは馬車で半時間程。馬車の時速がわからないので、徒歩でどれくらいかかるのかはわからない。それでも歩けば軽く一時間はかかるだろうし、何度か道を曲がってきたので、歩いて帰るのは無理そう。
御者が門番に声をかけて、私にこちらへと言うのに付いていく。
広い戸口は昼間は常に開け放たれていて、大勢の信者と覚しき人々が詰めかけている。
「いつもこんなにたくさんの方が参拝されているのですか?」
「いつもはこの半分ほどですが、聖女様が召喚されたという噂が広まり、皆一目でも聖女様のお姿を拝見できないかと詰めかけているのです」
このたくさんの人たちが財前さんに会うために…
それだけここの人たちが聖女の召喚を心待ちにいていたということになる。
門番に連れて行かれた入口は、信者の人たちがいた正面扉から少し横にずれた場所にあった。
「先生!」
「財前さん」
「待ってたんです、さあ、入ってください」
入口で名前を告げて案内された部屋に行くと、財前さんが駆け寄ってきた。
二日ぶりに再会した彼女は変わらず元気だった。
白のワンピースと金糸の綺麗な刺繍のローブを羽織っている。
彼女に与えられた部屋は広々としていて、白と金を基調とした家具で統一されていた。
「何だか本当に聖女様みたいね」
「みたいではなく、本当に聖女なんですよ。まだ実感はありませんけど」
「財前さんが思った以上に元気で安心したわ。あ、これお土産です。昨日作ったの」
財前さんと横並びに座ってから、昨日作った薔薇ジャムと砂糖漬けを渡した。
テーブル並べられていた食事は、神殿での食事と聞いてシンプルなものを想像していたけれど、肉もあってレインズフォード家で出されるものとそれほど変わらない。
「え、これ先生が作ったの?」
「ちょうどたくさん薔薇をもらったから」
「わあ、嬉しい、きれい」
喜んでもらえてほっとする。
「こっちの食べ物って、何だか地味というか、野菜がないですよね」
財前さんも目の前に用意された食事を眺め、私と同じことを言う。
「お肉がご馳走だと思っているみたいで、繊細さも何もないわ。ちっともばえがないもの」
「そうね。野菜は庶民の食べ物らしくって、ないことはないのだけど、高貴な人の食卓にはのぼらないようね」
「あ、やっぱり」
「だからお世話になっているお屋敷の厨房にお邪魔させてもらって、色々と料理させてもらったりしたの」
「ええ、そんなことを…どんなの作ったんですか?」
「肉はミンチにしてハンバーグにしたり、トマトソースを作ったり、醤油や味噌もあったから生姜焼きとか味噌漬けなんかもね」
「うう、美味しそう…食べたい。先生は作れるんですね。羨ましい」
神殿で用意してもらった料理を食べながら言うことではないのかも知れないけど、彼女の気持ちもわかる。
私よりずっと良いものを食べてきた財前さんなら余計にそう思うのだろう。
「じゃあ、何か作って持ってくるわ」
「ほんとですか? 嬉しい! あ、でも明日から潔斎の儀式だから、それが終わらないと」
「潔斎の儀式って、大変なの?」
アドルファスさんも儀式の内容はわからないと言っていた。
「どこかに籠もってひたすら祈りを捧げるそうです」
「苦しいことや危険なことはないのね」
「それはなさそうです」
「ひたすら祈りを捧げるというのも大変そうだけど、危ないことはなさそうで安心したわ」
「心配してくれてありがとうございます。でも、私のほうこそ、先生のこと心配しているんですよ。私が巻き込んだようなものだし」
「財前さんのせいではないわ。それに私なら大丈夫よ。思ったより自由にさせてもらっているし、皆さんとても親切だから」
「でも、先生を連れていった人…」
そう言えば、財前さんはアドルファスさんのことを気味悪がっていた。だから余計に心配なのかもしれない。
「あの仮面には理由があって、よく知ればいい人よ」
キスされたことは言えないけど、アドルファスさんもレディ・シンクレアも私のことをとても大切にしてくれている。
「それならいいんだけど…その人のことで、私も色々噂を聞いたから…」
「噂?」