異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます
49 ハンドメイドクラフト
集まった人たちの間を割ってアドルファスさんと並んで歩き、その後ろを門番の人たちがぞろぞろと続いた。
「そなたらはもう引き上げてもらって構わない。世話をかけた」
「いえ、街の治安を護るのが我らの任務ですので」
門番の人たちとは違う制服を着た人たちが、アドルファスさんに敬意を払いその場を立ち去っていく。
「あの人たちは…」
「彼らは街の警備をする警備兵たちだ。門番だけでは人手が足りないので協力を頼んだ」
「…………!」
そんなに大勢を巻き込んでしまっていたことに愕然とする。
「元の世界ではどうだったか知りませんが、比較的治安が維持されている王都でも、人攫いやスリなどはいる。特にあなたは少女に見えるのでそういう輩の餌食になりやすい」
外国でも同じような事件はあり、観光客は狙われやすいので注意してくださいと言われたことがある。ここでも同じように気を配らないといけないのだ。
「ご迷惑をおかけしました」
「私も過剰に反応し過ぎたかも知れないが、そういう危険もあるのだと気に留めておいてほしい」
「はい。怒っていますよね」
意気消沈して上目遣いに彼を見る。
色々と世話を焼いてくれているのに、私は迷惑しかかけていない。
「肝を冷やして心配したが、怒ってはいません」
私がいた場所から神殿まではそんなに離れていなかったので、すぐに神殿に着いた。
「誠に申し訳ございませんでした。どのような処分も甘んじてお受けします」
門番の詰所前に辿り着くと、門番の人たち総出で膝をついて頭を下げられた。一番前にいる人が責任者なのか、他の人たちと同じデザインで色違いの服を着ている。
大勢の人に一度に土下座に近い状態で頭を下げられるのは、もちろん初めて。
周囲の人たちも何事かと遠巻きにこちらの様子を窺っている。
「そんな、顔を上げて立ってください。元はと言えば私が勝手に彷徨いたせいです。処分など必要ありません」
「しかし…」
責任者らしき男性が少し頭を上げて私からアドルファスさんに視線を移す。
怒っているのはアドルファスさんで、彼らが怯えているのも彼に対してだ。
「そうですよね、アドルファスさん」
すっかり怯えている彼らを何とかしようとアドルファスさんに訴える。
「ユイナさんに免じて、私からの処分は今回は大目に見よう。大事な儀式の前に流血を見るのは誰も望まないだろうからな」
その言葉に場の緊張が一気に緩んだ。
「あ、ありがとうございます」
「ただし、今回だけだ。聖女ではなくとも、彼女も異世界からこの世界に召喚された身。そこに神の意志があったと思い、聖女同様彼女にも礼を尽くすことを徹底するよう、きつく進言しておく。神殿内部で沙汰があるならそれに従うように。私からは厳罰はせぬよう申し添えておく」
「畏まりました。二度とこのような失態は犯しません」
「では、我々はこれで失礼する。ユイナさん、帰りましょう」
そのまま私達が馬車に乗ってその場を去るまで、彼は頭を垂れたままだった。
門番の詰所を出て馬車へと向かいながら、アドルファスさんに訊ねた。
「そう言えば、どうしてアドルファスさんがここに?」
「仕事が早く終わったので、あなたを迎えに来たのです。なのにあなたはいなくて、神殿の者はどこに行ったのかわからないと言う。驚きで肝が冷えました」
「聖女の予定が急に変わって、彼女との面会が早く終わったんです」
「それは聞きました。でもだったらそこで待っていてくれれば良かった」
「そうですね…でも…」
王子に厄介者のように言われて、腹が立って出てきたと言ったらアドルファスさんはどう思うだろう。
「どうぞ」
二日前と同じ馬車。同じようにアドルファスさんが手を差し出す。
今度は間違わず差し出された手に手を乗せた。
乗せた瞬間、ぐっと手を力強く引っ張られた。
「あの…アドルファスさん?」
「これは?」
「え?」
彼は私の手首に付いたさっき作った革のブレスレットを見ている。
「これはさっき私が居たファビオさんの所で」
「誰かがあなたに?」
鋭い視線で問われ首を振った。
「違います。私が余り物の革の切れ端で作ったんです」
「これを、あなたが?」
鋭い目つきが一転して驚きに変わる。まじまじと穴が空くほど手首を凝視されて困惑する。
「あんまり見ないで下さい。即席で作ったから編み目も粗くて、不格好ですから」
反対側の手で隠した。
アドルファスさんは何か言いたそうだったけど、何も言わず馬車へと乗り込んだ。
「ところで、あそこで何をしていたのですか?」
馬車が走り出すとアドルファスさんが訊いて来た。
「えっとですね、」
馬車から神殿へ来るまでに見えた通りをへ歩いて行って、そこで起こったことを説明した。
「困っている人を見過ごせない。そういう所はいいと思います」
「あの…ごめんなさい」
説明し終えてから、迷惑をかけたのは悪いと思い謝った。
「私のいた日本という国は安全でしたから、同じように思っていました」
「独り歩きの危険性についてきちんと話しておかなかった私も悪いんです。これからは気をつけてください」
「はい。でもどうして私があそこにいるとわかったのですか?」
私の名前を呼んで駆け寄ってきたアドルファスさんの姿を思い出す。そこに私がいると確信して来た感じだ。
「魔法を使いました」
「魔法?」
「先に思念を飛ばし、あなたに呼びかけました」
「え!じゃあ…呼ばれたと思ったのは…」
「私です」
呼ばれたと思ったのは勘違いではなかった。
「そなたらはもう引き上げてもらって構わない。世話をかけた」
「いえ、街の治安を護るのが我らの任務ですので」
門番の人たちとは違う制服を着た人たちが、アドルファスさんに敬意を払いその場を立ち去っていく。
「あの人たちは…」
「彼らは街の警備をする警備兵たちだ。門番だけでは人手が足りないので協力を頼んだ」
「…………!」
そんなに大勢を巻き込んでしまっていたことに愕然とする。
「元の世界ではどうだったか知りませんが、比較的治安が維持されている王都でも、人攫いやスリなどはいる。特にあなたは少女に見えるのでそういう輩の餌食になりやすい」
外国でも同じような事件はあり、観光客は狙われやすいので注意してくださいと言われたことがある。ここでも同じように気を配らないといけないのだ。
「ご迷惑をおかけしました」
「私も過剰に反応し過ぎたかも知れないが、そういう危険もあるのだと気に留めておいてほしい」
「はい。怒っていますよね」
意気消沈して上目遣いに彼を見る。
色々と世話を焼いてくれているのに、私は迷惑しかかけていない。
「肝を冷やして心配したが、怒ってはいません」
私がいた場所から神殿まではそんなに離れていなかったので、すぐに神殿に着いた。
「誠に申し訳ございませんでした。どのような処分も甘んじてお受けします」
門番の詰所前に辿り着くと、門番の人たち総出で膝をついて頭を下げられた。一番前にいる人が責任者なのか、他の人たちと同じデザインで色違いの服を着ている。
大勢の人に一度に土下座に近い状態で頭を下げられるのは、もちろん初めて。
周囲の人たちも何事かと遠巻きにこちらの様子を窺っている。
「そんな、顔を上げて立ってください。元はと言えば私が勝手に彷徨いたせいです。処分など必要ありません」
「しかし…」
責任者らしき男性が少し頭を上げて私からアドルファスさんに視線を移す。
怒っているのはアドルファスさんで、彼らが怯えているのも彼に対してだ。
「そうですよね、アドルファスさん」
すっかり怯えている彼らを何とかしようとアドルファスさんに訴える。
「ユイナさんに免じて、私からの処分は今回は大目に見よう。大事な儀式の前に流血を見るのは誰も望まないだろうからな」
その言葉に場の緊張が一気に緩んだ。
「あ、ありがとうございます」
「ただし、今回だけだ。聖女ではなくとも、彼女も異世界からこの世界に召喚された身。そこに神の意志があったと思い、聖女同様彼女にも礼を尽くすことを徹底するよう、きつく進言しておく。神殿内部で沙汰があるならそれに従うように。私からは厳罰はせぬよう申し添えておく」
「畏まりました。二度とこのような失態は犯しません」
「では、我々はこれで失礼する。ユイナさん、帰りましょう」
そのまま私達が馬車に乗ってその場を去るまで、彼は頭を垂れたままだった。
門番の詰所を出て馬車へと向かいながら、アドルファスさんに訊ねた。
「そう言えば、どうしてアドルファスさんがここに?」
「仕事が早く終わったので、あなたを迎えに来たのです。なのにあなたはいなくて、神殿の者はどこに行ったのかわからないと言う。驚きで肝が冷えました」
「聖女の予定が急に変わって、彼女との面会が早く終わったんです」
「それは聞きました。でもだったらそこで待っていてくれれば良かった」
「そうですね…でも…」
王子に厄介者のように言われて、腹が立って出てきたと言ったらアドルファスさんはどう思うだろう。
「どうぞ」
二日前と同じ馬車。同じようにアドルファスさんが手を差し出す。
今度は間違わず差し出された手に手を乗せた。
乗せた瞬間、ぐっと手を力強く引っ張られた。
「あの…アドルファスさん?」
「これは?」
「え?」
彼は私の手首に付いたさっき作った革のブレスレットを見ている。
「これはさっき私が居たファビオさんの所で」
「誰かがあなたに?」
鋭い視線で問われ首を振った。
「違います。私が余り物の革の切れ端で作ったんです」
「これを、あなたが?」
鋭い目つきが一転して驚きに変わる。まじまじと穴が空くほど手首を凝視されて困惑する。
「あんまり見ないで下さい。即席で作ったから編み目も粗くて、不格好ですから」
反対側の手で隠した。
アドルファスさんは何か言いたそうだったけど、何も言わず馬車へと乗り込んだ。
「ところで、あそこで何をしていたのですか?」
馬車が走り出すとアドルファスさんが訊いて来た。
「えっとですね、」
馬車から神殿へ来るまでに見えた通りをへ歩いて行って、そこで起こったことを説明した。
「困っている人を見過ごせない。そういう所はいいと思います」
「あの…ごめんなさい」
説明し終えてから、迷惑をかけたのは悪いと思い謝った。
「私のいた日本という国は安全でしたから、同じように思っていました」
「独り歩きの危険性についてきちんと話しておかなかった私も悪いんです。これからは気をつけてください」
「はい。でもどうして私があそこにいるとわかったのですか?」
私の名前を呼んで駆け寄ってきたアドルファスさんの姿を思い出す。そこに私がいると確信して来た感じだ。
「魔法を使いました」
「魔法?」
「先に思念を飛ばし、あなたに呼びかけました」
「え!じゃあ…呼ばれたと思ったのは…」
「私です」
呼ばれたと思ったのは勘違いではなかった。