異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます
57 素朴な疑問
聖女に出来なくて私に出来ることがある。
アドルファスさんがそう言い、言われるまま一度部屋に戻って寝支度を済ませてから戻ってきた。
仮面はまだ外したままだったが、いつまでも裸でいるわけにもいかないので、さすがに上着は着ていた。
「こちらへ。乾かしてあげましょう」
すっかりお馴染みになった濡れ髪を乾かすドライヤーの役割。
ベッドで半身を起こしたアドルファスさんに近づいた。
「魔法を使って大丈夫なんですか?」
魔法の使い過ぎで具合を悪くしたのに、神官に治してもらったからと言って今夜はやめた方がいいのではと心配する。
「これくらいは大丈夫です」
半信半疑ながら彼の前で膝をついて頭を向けると、一瞬の内に乾いた。
「ありがとうございます。それで、私は何をしたらいいんですか?」
「こちらへ」
少し体をずらしてシーツを捲って手招きされた。
「え?」
「何もしません。ただ隣で一緒に寝てくれればいいんです」
「え、い、いえいえ、そ、それは」
まさか添い寝に誘われるとは思っていなかった。
「こんなこと、聖女様にはしてもらえないですよね」
「それはそうですが…そ、そんな何気に首をコテンと傾けそう言われても、子どもじゃないんだから」
「ええ、でも『恋人』ですよね、私達」
「そ、それは…でも私が嫌ならって…」
「あんな風に人の裸を見て触っておいて、それで終わりですか」
「あ…い、いえあれは…」
触ったのは事実で、後になってなかったことにも出来ない。
「ただ一緒に寝るだけです。さすがに私も治療後にすぐはしません。出来ないこともありませんが、今夜は我慢しますよ」
ポンポンとベッドを軽く叩き、もう一度促す。
「本当に…横になるだけ…でいいんですか?」
「多少はひっついたりするかもしれませんが、何なら手首を縛ってもいいですよ」
両手首をひっつけて前へ向ける。
具合が悪い人といつまでも言い合いをしてもと、諦めてベッドへと近づきよじ登った。
「背中をこっちへ」
背中を向けて横になると、後ろから抱き込まれた。
「ア、アドルファスさ…ん……」
振り返って抗議しようとする唇を塞がれてしまう。
「手、手は出さないって…」
唇が離れてすぐに文句を言った。
「手は出していません」
「う…それは屁理屈…」
「これくらいは許してください。看病だと思って…」
恨みがましく睨みつけたが、彼のことを心から憎めない気持ちもあって「約束…守ってくださいね」とだけ言った。
「そういえば、ボルタンヌ商会から明日の朝、仕上がったドレスを届けると連絡があったと、ディーターが言っていました」
「え、もう出来たのですか?」
昨日持って帰ったばかりなのに。
「あそこは仕事が早くて丁寧だと評判です。その分値は張りますが、それから…えっとぶら、何とかももう少し話が聞きたいと言うことです。ぶら…とは何ですか?」
「あ…え…えっと…」
多分間違いなくブラジャーのことだろう。それが何か知らないアドルファスさんは興味津々で私の答えを待っている。
「そ、それは…男性が気にすることでは…」
「ということは女性用の何かということですか」
「ま、そういうことです。勘がいいですね」
皆まで言わなくても、察してくれたようでホッとする。
「私が知らないと言うことは異世界の物なんですね」
「そうです」
「ユイナさんも持っているんですか?」
「はい」
「ではそれを見せてください」
「はい!!え、あ」
調子よく受け答えしていてうっかり頷いてしまった。
「い、今のはちが…」
ガチン
「ウッ」
「え」
取り消そうと頭を勢いよく上げた拍子にアドルファスさんの顎に頭突きをしてしまった。
顎を押さえて少し涙目になっている。
「ご、ごめんなさいっ」
「……イタ」
「ど、どうしよう…えっと、もしかして口とか舌切ってしまいました」
「大丈夫…ちょっと当たっただけ」
「み、見せてください」
確認すると、顎が少し赤くなっているけれど、目立った傷はない。
「この体に後ひとつくらい傷が増えたところで…」
「だ、だめです。大事な体、そんなこと言ってはだめです。いくらたくさん傷があっても、痛いものは痛いんですから」
自分の体のことに無頓着な言い方についムキになった。
「……つい生徒に言うみたいに言ってしまいました」
「私の方こそ…ふふっ」
「何か?」
「そんな風に叱られるの…いつ以来かなと思って…心配してくれてありがとうございます」
「いえ…何でもなかったら良かった。石頭ですみません」
「こんなかわいい攻撃ならいつでも歓迎します」
「かわいい…」
甘いとろけるような声で囁かれ赤面する。
「それで、ぶらって何ですか?」
アドルファスさんがそう言い、言われるまま一度部屋に戻って寝支度を済ませてから戻ってきた。
仮面はまだ外したままだったが、いつまでも裸でいるわけにもいかないので、さすがに上着は着ていた。
「こちらへ。乾かしてあげましょう」
すっかりお馴染みになった濡れ髪を乾かすドライヤーの役割。
ベッドで半身を起こしたアドルファスさんに近づいた。
「魔法を使って大丈夫なんですか?」
魔法の使い過ぎで具合を悪くしたのに、神官に治してもらったからと言って今夜はやめた方がいいのではと心配する。
「これくらいは大丈夫です」
半信半疑ながら彼の前で膝をついて頭を向けると、一瞬の内に乾いた。
「ありがとうございます。それで、私は何をしたらいいんですか?」
「こちらへ」
少し体をずらしてシーツを捲って手招きされた。
「え?」
「何もしません。ただ隣で一緒に寝てくれればいいんです」
「え、い、いえいえ、そ、それは」
まさか添い寝に誘われるとは思っていなかった。
「こんなこと、聖女様にはしてもらえないですよね」
「それはそうですが…そ、そんな何気に首をコテンと傾けそう言われても、子どもじゃないんだから」
「ええ、でも『恋人』ですよね、私達」
「そ、それは…でも私が嫌ならって…」
「あんな風に人の裸を見て触っておいて、それで終わりですか」
「あ…い、いえあれは…」
触ったのは事実で、後になってなかったことにも出来ない。
「ただ一緒に寝るだけです。さすがに私も治療後にすぐはしません。出来ないこともありませんが、今夜は我慢しますよ」
ポンポンとベッドを軽く叩き、もう一度促す。
「本当に…横になるだけ…でいいんですか?」
「多少はひっついたりするかもしれませんが、何なら手首を縛ってもいいですよ」
両手首をひっつけて前へ向ける。
具合が悪い人といつまでも言い合いをしてもと、諦めてベッドへと近づきよじ登った。
「背中をこっちへ」
背中を向けて横になると、後ろから抱き込まれた。
「ア、アドルファスさ…ん……」
振り返って抗議しようとする唇を塞がれてしまう。
「手、手は出さないって…」
唇が離れてすぐに文句を言った。
「手は出していません」
「う…それは屁理屈…」
「これくらいは許してください。看病だと思って…」
恨みがましく睨みつけたが、彼のことを心から憎めない気持ちもあって「約束…守ってくださいね」とだけ言った。
「そういえば、ボルタンヌ商会から明日の朝、仕上がったドレスを届けると連絡があったと、ディーターが言っていました」
「え、もう出来たのですか?」
昨日持って帰ったばかりなのに。
「あそこは仕事が早くて丁寧だと評判です。その分値は張りますが、それから…えっとぶら、何とかももう少し話が聞きたいと言うことです。ぶら…とは何ですか?」
「あ…え…えっと…」
多分間違いなくブラジャーのことだろう。それが何か知らないアドルファスさんは興味津々で私の答えを待っている。
「そ、それは…男性が気にすることでは…」
「ということは女性用の何かということですか」
「ま、そういうことです。勘がいいですね」
皆まで言わなくても、察してくれたようでホッとする。
「私が知らないと言うことは異世界の物なんですね」
「そうです」
「ユイナさんも持っているんですか?」
「はい」
「ではそれを見せてください」
「はい!!え、あ」
調子よく受け答えしていてうっかり頷いてしまった。
「い、今のはちが…」
ガチン
「ウッ」
「え」
取り消そうと頭を勢いよく上げた拍子にアドルファスさんの顎に頭突きをしてしまった。
顎を押さえて少し涙目になっている。
「ご、ごめんなさいっ」
「……イタ」
「ど、どうしよう…えっと、もしかして口とか舌切ってしまいました」
「大丈夫…ちょっと当たっただけ」
「み、見せてください」
確認すると、顎が少し赤くなっているけれど、目立った傷はない。
「この体に後ひとつくらい傷が増えたところで…」
「だ、だめです。大事な体、そんなこと言ってはだめです。いくらたくさん傷があっても、痛いものは痛いんですから」
自分の体のことに無頓着な言い方についムキになった。
「……つい生徒に言うみたいに言ってしまいました」
「私の方こそ…ふふっ」
「何か?」
「そんな風に叱られるの…いつ以来かなと思って…心配してくれてありがとうございます」
「いえ…何でもなかったら良かった。石頭ですみません」
「こんなかわいい攻撃ならいつでも歓迎します」
「かわいい…」
甘いとろけるような声で囁かれ赤面する。
「それで、ぶらって何ですか?」