僕たちの関係「共犯者」
空が笑いかけると、結月の固かった表情がほんの少しだけ柔らかくなったような気がした。きっと、それに気付けるのは空だけだろうが……。

結月は、一言で表すならば空とは真逆の完璧な人間だろう。勉強では東大生が解くような難問を簡単に解き、運動では体育の時間に試合があるたびに活躍し、音楽ではピアノだけでなく様々な楽器を弾きこなし、美術では完璧な模写や作品を作り上げる。おまけに誰もが振り返るほどの美貌の持ち主だ。

だが、完璧が故にクラスメートたちから彼女に親しげに話しかけることは空を除いてないに等しい。結月が笑うことのないクールな人柄なのもあると思うが、彼女に「友達」と呼べる存在はなかった。

そんな結月を一目見た時から気になり、積極的に空は話しかけていた。結月にどれだけ素っ気ない返事をされようとも、空は結月と話せるだけで嬉しさが込み上げ、胸が高鳴っていくのだ。

「……ねえ、クラスメートくん。あなたは私にばかり話しかけているけど、変な目で見られない?友達に何か言われたりしていないの?」
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