幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
好きな人がいるんでしょう?
「一椛(いちか)。貴晴(たかはる)くんとの婚約が正式に決まった。四宮家の名に恥じぬよう、胸を張って行きなさい」
父が抑揚を持たない口調でそう告げた。
貴晴さんが日本に帰ってきたのだろう。
彼に会える。何年ぶりだろうか。大人になった私を、彼は見てくれるだろうか。
胸が高鳴るのと同時に、ちくりと痛む。
この婚約は、彼が望んだものではないはずだから。
貴晴さんは、本当に愛した人との関係を絶たれることになるのだから。
私は複雑な気持ちを胸に押し込めて笑顔を作る。
「はい。お父さん」
私がそう返事をすると、父は満足そうに頷いた。
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