幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
幸せな時間
最高気温が氷点下なんて、めちゃくちゃ寒い。
目の前は雪景色で、こんな光景は見たことがないからワクワクする。
「雪だね。すごいね!」
「滑って転ぶなよ」
「転ばないよ! ていうか、この時期にその単語、禁句!」
2月中旬。学生の受験シーズンだ。不吉な単語は避けるべし。
私たちは北海道に来ていた。2泊3日の旅行だ。今日は私の誕生日。貴晴さんが美味しいものをたくさん食べさせてくれるらしい。
「ああ、高校受験の前日雨が降っていたから、地面が濡れてて。 一椛、試験会場で派手に転んで保健室に行っていたよな」
「なんで覚えてるの! 恥ずかしいから忘れてよ、もー!」
背中をポコポコ叩いていると、貴晴さんは笑いながら私の手をとる。
ぎゅっと握って、にっと笑う。
「行くぞ。時間が許す限り、食べるんだろ?」
うぅ…そうよ。せっかくの北海道、貴晴さんにからかわれてばっかりじゃもったいない!
「貴晴さんにも手伝ってもらうからね」
「お任せを」
ふっと笑って、ふかふかの雪道を歩きだした。