幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「そうですか…。それは、帰りづらいですね」

考えあぐねて、私はひとつ提案を思いつく。

「今日は、家に泊まっていきますか? 一晩離れて冷静になれば、落ち着いて話し合いもできると思うんです」

「イチカ……いいの? 私、邪魔じゃないかしら」

「全然。 貴晴さんもいいって言ってくれますよ、きっと」

正直いうとそこは微妙だが、まさかだからといってアンさんを追い出したりはしない。

「ありがとう! イチカは本当に親切ね!」

とりあえず、未だ鳴り止まない電話には出てあげてほしい。
アンさんは苦い顔をしながら通話ボタンを押し、「今日は…と、友達の家に泊まるから!」と叫ぶように言っていた。
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