幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない

夜遅く、貴晴さんが帰ってきた。
案の定、彼はアンさんの姿に驚き、泊まってもらうことにしたと伝えると、嫌そうな顔をする。

「なんでうちなんだよ。 どの面下げて一椛と…」

「私はもう気にしてないから大丈夫。 アンさんは貴晴さんを頼ってここに来たんだよ。1日くらい、いいでしょう?」

「はぁ。おまえ優しすぎ」

「さしあたっては、私はアンさんと一緒に寝るね」

「はあ!? 駄目だ、どうして俺じゃなくてあいつと…」

「女同士、話が積もりそうなの」

旅行以来、私は貴晴さんの部屋のベッドで一緒に寝ていたのだ。
今日は別々で、と言えば絶対嫌がると思ったけれど、譲る気のない私に諦めたらしい。

「あの台風め…」

恨めしそうにする貴晴さんを宥めつつ、私はアンさんの待つ部屋に行く。

「イチカ、タカハルは、なんて?」

「大丈夫です。私がこっちで寝るって言ったら、ちょっと怒ってましたけど」

「アハハ、タカハル、私に嫉妬してるわね」

愉快愉快、と言わんばかりに笑うので、ふたりは本当に兄妹みたいな関係なのだなぁと微笑ましく思った。
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