幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない

「えぇ!? プロポーズされてないの!?」

アンさんが控えめに絶叫して、信じられない、というふうに壁を睨みつける。
そっちは貴晴さんがいる部屋だ。

「まあ、最初は政略結婚の形だったし、必要なかったというか」

「いやいや! そんなの、女としてプロポーズって憧れるじゃない? 私、ケンが寝転びながら指輪渡してきたら受け取らないわ! 出直しなさいって家出しちゃうわよー!」

アンさんの恋人は、ケンさんというらしい。さっき教えてくれた。
話はアンさんから、私に移っている。
指輪を渡された経緯と、プロポーズはなかったと言う話をしたら、彼女は目をまん丸にして驚いている。

「あはは、たしかに、めちゃくちゃ雑ですよねぇ」

「あははじゃないわよ、もう。 信じられないわ、タカハルはヘタレなのね」

アンさんの貴晴さんへの当たりは強い。
歯に衣着せぬ物言いは、潔くて好きだけれど。
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