幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
恋焦がれて
足が痺れた。崩しちゃダメかな、ダメだよなぁ…。
ちらりと視線だけ横に向けると、貴晴さんが薄く笑みを浮かべていた。
それに対して、私たちを正座させている張本人が厳しい声を上げる。
「聞いているのか、貴晴」
着物を身につけた白髪の老齢の男性は、貴晴さんのおじい様だ。
なぜ、この方が険しい声音で私たちを呼び出したのかというと…
「結婚して1年が経った。それなのになぜ子供をもうけない。おまえの代で、西園寺を潰す気か」
そう。一族経営に頑固なこだわりをお持ちのおじい様は、結婚1年目を迎えた私たちが一向に子どもを作らないことにお怒りなのだ。
早く西園寺の後継者を作れ。曾孫の顔を見せろと仰っている。
「俺たちは俺たちなりに、西園寺を守っていきたいと思っています。いずれは子どももほしいと思っています。ですが子は授かりものですよ。他人に作れと言われてできるものではありません」
貴晴さんは依然とした態度で言う。