幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「言い訳をするんじゃない。 一椛さんも、西園寺に嫁いだからにはしっかりとその役目を果たしてもらわねば困るんだよ」

不意に私に視線を移され、思わず変な声で返事をしそうになる。
貴晴さんのはおじい様の望んだ言葉では到底ないので、ますます語気が強まっている。

えーと、なんて言えばいいかな。
はい分かりましたって聞き入れるのも何か違う気がするし、かといって嫌ですなんて言ったら追い出されかねない。

頭を捻っていると、貴晴さんが言う。

「俺は一椛と、西園寺のために一緒にいるのではありません。西園寺において、彼女にそんな役目はありませんし、与えません。俺はただ、一椛と笑って暮らせればそれでいい。 今日はもう失礼します」

すくっと立ち上がり、今にも爆発しそうなおじい様に一礼して私を見る。

「貴晴!」

「帰ろう、一椛。立てるか?」

「え、えぇ」

い、いいのかな。
私は貴晴さんに促されるまま、ビリビリと電流が走っているような足に心の中で悲鳴を上げながらおじい様の部屋を後にした。

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