幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない

庭園並の広さを誇る西園寺本家の庭を出て車に乗り込む。

「いたた…正座なんてすることないから、足が限界。貴晴さんは大丈夫なの?」

「昔、高校生になるまで茶道を習っていたからな」

「ああ、そういえばそうだったね。 久しぶりに貴晴さんの御抹茶、飲みたいなぁ」

「それはいつでも点ててやる。 それより、さっきのじいさんの言葉。気にするなよ」

「分かってるけど、いいの? 最後はおじい様を完全に無視してたけど」

「またすぐに呼び出されるだろうな。 でも次は俺一人でいくよ」

「それじゃあ四宮の面目が立たないわ。一緒に行っておじい様のお話を聞くだけだもん。私は大丈夫」

私たちは、意図的に子どもを作らないわけでも、作ろうとしているわけでもない。
ただ自然の流れに任せようとふたりで決めたのだ。
不妊の検査や治療のことは、今は考えていない。

私たちふたりは、夫婦だけの家庭でも全然いいと思っている。
だけどやっぱり、西園寺家のことを考えると、妊活をして本気で子作りに励んだほうがいいのだろうか。
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