幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「無理に一族経営を貫かなくても、優秀な人材をトップに据えればいい。 それにもし子どもができても、今度は男だ女だとうるさいに決まってる」

おじい様の様子が容易に想像できて、苦笑いを浮かべる。

「俺たちは俺たちの家庭を築いていこう。いくらじいさんでも、孫夫婦の家庭に口出しする権利はないんだから」

こういうとき、全面的に味方になってくれる人がこの世にどれだけいるだろう。
西園寺のように立派な家系でなくても、時代錯誤的な考えをする上の世代の人は多いと聞く。

だけど旦那様が同じ価値観で守ってくれるなら、それはとても心強い。
貴晴さんは頼りになる旦那様だ。きっと、いいパパになるんだろうな、なんて思った。

それに、貴晴さんは子どもがほしいんじゃないかな。
随分前、結婚前の話だ。

部屋の内見の帰り、カフェでのこと。

貴晴さんは部屋を多く欲しがっていて、理由を聞いたら『子どもができたら』なんて話し出したのだ。

あの時は、貴晴さんと愛し合う未来は見えていなかったから驚きと羞恥心で話を逸らしてしまったけれど、彼は子どもが好きなのだと思う。

そんな彼を、パパにしてあげたい。とはいえ、秘書室長としてまだまだキャリアを積みたい気持ちもある。バリバリ働いて、貴晴さんと二人三脚で逞しい生活を送るか、妻として母親として、慎ましく家庭を支えるか。

こればっかりは、すぐに答えを出すのは難しいものだ。

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