幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
ところがその日、仕事中に目眩がして動きを止めることが何度かあった。
疲れているのだろうか。食欲不振に体調不良なんて、私らしくもない。
仕事はこなしたけれど、帰って夕飯を作る気力は残っていなかった。
貴晴さんに、夕飯は作れそうにないとメッセージを送ると、秒で既読がついて返信がくる。
すぐにかえる、と変換し忘れたようで、心配させてしまった。
ソファで横になっていたらうとうとしてきて、気づいたら瞼を閉じていた。
眠りは浅かったようで、玄関の開く音に目を覚ます。
時計を見ると30分ほど眠っていたらしい。
目眩は収まったけれどなんだか体が疲れている。
貴晴さんがリビングルームに入ってくるので体を起こすと、彼は荷物を放って飛んでくる。
「一椛! 大丈夫なのか? 起きなくていい、横になってろ」
「ちょっと目眩と、なんかだるいような。暑さに負けるなんて、体の頑丈さには自信あったんだけどな」
「そういう時もある。 でも心配だから、1度病院に行こう。なにか大きな病気の可能性だってあるんだ」
「そうする。 今度の土曜日、行ってくるね」
「一緒に行くよ。運転手が必要だろ」
「ありがとう」
貴晴さんが着いてきてくれるのは心強い。
疲れから来る不調なだけだと思うけれど、貴晴さんが私よりも辛そうな顔をするのだ。
心配性なこの人を安心させるためにも、万が一のためにも、受診することにした。