幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない


それから1週間後、仕事を終えた私はタクシーに乗っていた。
会社を出る前に化粧を直し、一つに束ねていた髪を下ろし、着替えもした。

いつもなら真っ直ぐ一人暮らしのマンションに帰宅するのを、反対方向に向かうのは、今から貴晴さんと待ち合わせがあるからだ。

彼と会うのは、貴晴さんがアメリカに飛び立つ前日以来のこと。
私の心臓は色んな意味でばくばくしている。

食事をしよう、と貴晴さんから誘いのメッセージが来たのは、父から婚約の話を聞いた翌日のこと。
彼はマメな人だから、婚約者になった私と会って仲を深めようとしてくれているのだと思う。

そんなことしなくても、私は彼の家族になれるだけで嬉しいのに。
なんて。アメリカに残してきたのだろう好きな人がいる貴晴さんに対して最低なことは、誰にも言えないけれど。
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