幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
期待しちゃうから
本格的に冬を感じるようになった11月初旬、婚姻届が受理されて、私は西園寺一椛になった。
聞きなれた苗字だけれど、これから自分もそう呼ばれるというのは少しむず痒い。
貴晴さんはすごく嬉しそうに、『何気に初めてのおそろいだよなー』なんて言っていた。
高校生か!って突っ込むどころか、私はかああっと全身が熱くなるのを堪えられなかった。
そして日曜、私と貴晴さんは朝から引越し作業に追われていた。
業者の人が家具家電なんかをテキパキ運び込んでくれているのを貴晴さんが対応してくれているので、私は細々とした食器なんかを片付けていく。
そうして業者による運搬は午前中のうちに完了し、そのあとふたりでそれぞれ荷解きを終えたころには、午後7時を回っていた。
「よかった〜、今日中に終わって」
「そうだな。明日から仕事だし、あまり時間が取れないからな」
「うんうん。 はあ、安心したらお腹すいてきた」
「デリバリーかテイクアウトにするか。 冷蔵庫何も無いし、何より疲れたから何か作る気も起きん」
「デリバリー! とかって、なんだかワクワクしない?非日常感っていうか」
「ふっ、そうだな」
達成感からかテンション高めな自覚ありの私に、貴晴さんは落ち着いた笑みを見せる。