幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
冬物のトレンチコートを羽織ってきたけれど、夜はやっぱりだいぶ冷え込む。
マフラーしてくれば良かったかも。

「そうだ、来週末休みを取れそうだから、一椛も予定を空けとけよ」

貴晴さんは今度も信じられないくらいナチュラルに手を繋いできた。
私の右手は彼のコートのポケットの中だ。

暖かいを通り越して、緊張して手汗をかきそう。恥ずかしいから、手汗対策をしたほうがいいかもしれない。

「どこかに出かけるの?」

「デート。夫婦なのに、初だけど」

「でーと…って、な、なんで…」

「したいから。 一椛の一日、俺にちょうだい」

「わかった。 た、楽しみにしてる、ね」

どうしよう。デートなんて、人生初だよ。
そんなの、恋人みたいだ。

私たちは、手を繋ぐし、デートの約束をするけれど、恋人どうしなわけではない、ちょっと変な夫婦だ。

テイクアウトしたお肉を、貴晴さんが結婚祝いに友人からもらったらしいワインと共にダイニングでふたりで囲んだ初めてのおうちごはんは、とても穏やかで幸福なものだった。

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