幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
貴晴さんの名前が出て、一瞬ドキリとした。
ここには、あまり面識がなくても会社の繋がりで招待されている人もいる。
この人は面識のある関係者だろうか。

彼女は黄金色の髪をふわふわと揺らし小首を傾げてみせる。
なんて可愛らしい。
スカイブルーの瞳に見つめられたら、女の私でもドキッとしてしまう。

ただ、万が一というのがあってはならない。
可愛いからって誰彼構わず応対していいわけではない。

「失礼ですが、西園寺とどのようなご関係でしょう」

彼の妻だと名乗るタイミングが掴めない。

「ええと、私シンガポールの本社を代表して参りました。株式会社せいえんでらの副社長をしております」

しなやかな美しい所作で名刺を取りだし、手渡された。

オグズ アンという名前らしい。
名刺も本物だと思う。

「失礼致しました。 西園寺は部屋におります。ご案内致しますね」

これ、このまま私が貴晴さんのところに案内して、変な空気にならないかしら。
妻が他人事のように来客を連れてきたら、かなりカオスな気がする。

いやでも、もう引き下がれない…。

「ありがとう! やっぱり日本人はとても優しい方ばかりね」

うぅ…なんだか騙しているようで良心が痛む。
貴晴さんのところについたら、お詫びして訂正しよう。

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