幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「ほら、呼ばれてるよ。 私は大丈夫だから」

「…すまない。 要人への挨拶は済んだし、気分が悪ければここには戻らずに先に部屋へ行っていろ」

「ありがとう」

大丈夫。少し頭を冷やしに外の空気を吸ったら、すぐに戻ってこよう。
貴晴さんを心配させてしまった。
私はもう一度「大丈夫」というように笑顔を見せ、彼を送った。



情けない。分かっていたことなのに。
貴晴さんの心は、ここにはないって。
大切な人の存在を知っていて、彼と結婚したのは私だ。
ふたりが未だに恋仲にあろうが、私がどうこう言えたことではない。
知らないふりをして、私は表向きの良き妻をしなければならない。

こんな未来は、分かっていたこと。
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