幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
ふぅ、と自然にため息が漏れて、慌てて辺りを見回す。
よかった、誰もいない。
と、思ったそばで、横から声をかけられる。
「イチカ。 また会ったね。私よ、アン」
「あ、アンさん! すみません、お見苦しいところを…」
「いいのよ! こういう場って、気疲れするもの」
本当はちがうけれど、彼女に本当のことは言えないので曖昧に頷く。
「ところで、イチカ。 あなたに聞きたいことがあるのだけど」
アンさんの声のトーンが変わった気がした。
彼女はこちらを見ずに言う。
私はひとり焦っていた。聞きたくない。本能的に、そう思った。
「イチカとタカハルは、恋人どうしなの?」
「えっ…」
そんなこと、聞いてどうするというのだろう。
あなたたちふたりが恋人どうしなら、私と貴晴さんがそうなわけがない。
実際、私の一方的な片思いなのだ。
「そうなの?」
「違い、ます。 私たちは、許嫁、というのでしょう。お互いが望んだわけでは…」
そう。望んだのは、私。
それが許嫁という形で叶っただけなのだ。
よかった、誰もいない。
と、思ったそばで、横から声をかけられる。
「イチカ。 また会ったね。私よ、アン」
「あ、アンさん! すみません、お見苦しいところを…」
「いいのよ! こういう場って、気疲れするもの」
本当はちがうけれど、彼女に本当のことは言えないので曖昧に頷く。
「ところで、イチカ。 あなたに聞きたいことがあるのだけど」
アンさんの声のトーンが変わった気がした。
彼女はこちらを見ずに言う。
私はひとり焦っていた。聞きたくない。本能的に、そう思った。
「イチカとタカハルは、恋人どうしなの?」
「えっ…」
そんなこと、聞いてどうするというのだろう。
あなたたちふたりが恋人どうしなら、私と貴晴さんがそうなわけがない。
実際、私の一方的な片思いなのだ。
「そうなの?」
「違い、ます。 私たちは、許嫁、というのでしょう。お互いが望んだわけでは…」
そう。望んだのは、私。
それが許嫁という形で叶っただけなのだ。