幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
なんとか話し合いの場を設けたいのだが、『疲れている』と言われてはそれ以上踏み込めない。
俺は存外小心者らしい。普段の俺なら無理やりにでも一椛を捕まえているが、そうしないのは、彼女が悲しい顔をするから。

寂しい、と顔に書いてある。
好きな人にそんな顔で拒絶をされてみろ。

堪えられない。めちゃくちゃ傷つく。いや、実際は傷つけた側なのだが…。

いかん。このままでは駄目だ。
離婚を突きつけられるのも時間の問題な気がする。
なんとしてでも、その前に誤解を解かなければならない。

クリスマスまで1週間を切った頃だ。
本格的に仕事の目処がついたので、一椛にメッセージを送った。

『クリスマスイブ、19時半に会社の駐車場に来てほしい。待ってる』

ここで来てもらえなかったら終わりだ。
俺は完全に見限られたことになる。
嫌われたくない。一椛に捨てられたら、多分俺は生きていけない。毎日廃人のように過ごすことになるだろう。
そんなの嫌だ。

メッセージには既読がつき、『わかった』と一言。
返信が来ただけでほっとして、胸が踊る。
大丈夫だ、まだ間に合う。
決めろ、俺。

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