幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
クリスマスイブがやってきた。
朝の天気予報で雪が降ってもおかしくない気候だと言っていた。
ホワイトクリスマスならぬホワイトクリスマスイブだ。ロマンチックでいい。
体の芯から冷え込むので、ちょっと寒すぎるが、最近まともに一椛と会話していない。家では笑った顔も見ない。
今日こそは一椛と話せると思うと、雪でも雨でもなんでも降ればいいと思う。
それにしたって、寒くて体の震えが止まらない。
社長室の暖房を極限まで上げるので、佐原に『あっついですねこの部屋!』と驚かれた。
いやだって、今日は特別寒いじゃないか。
19時になると、俺は仕事を切りあげ地下駐車場に向かった。
この日のためにできる限りの仕事は片付けた。おかげで約束の時間に余裕をもてた。
一椛も、今日まで残業せずとも帰れる仕事の量なはずだ。
車の中も寒い。一椛が来るまでに温めておくことが出来るのもよかった。
約束の時間より少し前に、一椛は来た。
良かった。
「来てくれて嬉しいよ。 ディナーを予約してあるから行こう。 寒くないか?」
「…大丈夫」
一椛の顔を見て、心の底から安堵する。
久しぶりに、まともに顔を見た。
どこか不安げというか、表情は明るくないが。