幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
貴晴さんに言わないと。
この間、アンさんに誘われた時は、彼女の勢いに圧倒されて連絡を怠ってしまった。
そのせいで、アンさんに家まで送らせて、貴晴さんには部屋まで運んでもらったらしい。

だいぶ酔っていて、私は何一つ覚えていなかったのだ。
二の舞にならないように、お酒は控えよう。節度を持って楽しもう。

貴晴さんに話すと、彼はあははと笑って言う。

「お互いの相手が割れるのも時間の問題っぽいな」

気にしているのは私だけ。
貴晴さんは公にしたいと思っているので、慌てた様子は微塵もない。
むしろ喜んでいるようにも見える。

…はぁ。なんだかこのまま隠しておかなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。

貴晴さんとの結婚が発覚しても、私の素性まで漏れるとは限らないし。

「その忘年会、俺も行っちゃ駄目なのか。 ていうか、なんで俺誘われないんだよ。社長だぞ、大切にしろっての」

「飲み会に会社のボスを呼ぼうなんて思わないよ。 でも、誘ってほしかったみたいって言えば、みんな歓迎してくれるよ。特に女子」

「行く。絶対行く。 もうおまえ、俺のいない所で飲むなって言っただろ。飲み会で酔いつぶれようもんなら、おまえの命はないと思ったほうがいい」

「大袈裟ねぇ。もうあんなふうに飲んだりしないってば」

「心配だから。俺も行く」

「分かったよ。佐原さんに言っとく」

あの日のことについて、私の信用は失ったらしい。
まあでも、悪いのは全面的に私だし、通報を迷うくらいにはすごく心配かけちゃったので、あんまり反抗もできない。
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