幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
私の父は、西園寺グループが何百年も昔から懇意にしている企業の社長だ。
有名人さながらの彼と私が政略結婚することになった背景には、御曹司と社長令嬢という肩書きがあった。

西園寺グループ本社、株式会社にしのてらを薦めてきたのは父だけれど、私は一般採用で入社した。社長令嬢だと自分から言うつもりは毛頭なかったけれど、万が一あとあとコネ入社だなんだと後ろ指をさされるのは避けたかったから。

普通の社員として働いて5年。真面目が取り柄の私はコツコツ上司の信頼を得ていたらしく、去年総務部秘書課の室長に抜擢された。ちょうど前室長の退職が決まっていたというタイミングの影響が大きいところもあるが、27歳で就任は、過去最年少らしい。

ちなみに、人事のいちばんのお偉いさん以外、私の実家のことは知らない。その人は私の叔父にあたる人で、私のことも良くしてくれるが、私情を持ち込んで仕事をするような人ではないのは、厳格な父の弟であることからもよく知っている。

私が社長令嬢だという情報の機密にも協力してくれているし、本当にお世話になっている。
そんな人が、ちゃんと私の仕事を評価してくれたことは、純粋に嬉しかった。
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