幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「三郷くん?」

「四宮さん。 この後、社長…旦那とデートですか?」

そんなことを聞いてどうするのだろう。
言い淀んでいると、三郷くんがじりじりと近づいてくる。私は後ろに下がる。

…デジャヴだ。
ただ、この間と違ってこの状況があまり良くないことは、三郷くんの雰囲気から察する。

「逃げないでください。 ていうか、これから俺と遊びません?」

「…何言ってるの? そこ、どいて。出られない」

「ここから?出しませんよ。 こんなところ、誰も寄り付きませんから、絶好の密会場ですね」

密会って…

「あなたが欲しい。 俺とこんなところで会ってたの知ったら、社長、どんな顔しますかね」

三郷くんがにっと口角を上げて笑った。
気味の悪い笑顔だ。今まで見せてきた、人懐っこい笑顔とは大違い。
こっちが本性? だとしたら、私はとんでもない子に懐かれたものだ。
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