幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「三郷。 俺の女に手を出しておいて、タダで済むと思うな」

西園寺パワー。濫用はしないでほしいけれど、ドスの効いた声で貴晴さんが言う。

三郷くんはふんっと馬鹿にしたように笑ったあと、資料庫を出ていった。

「一椛。ひとまずここを出よう。 立てるか?」

こくんと頷いて、貴晴さんに支えられながら立ち上がる。
まだ足が震えていた。

「ごめんなさい」

声も震える。
安心した。ほっとした。それと同時に、罪悪感も溢れてくる。

「帰ろう」

私を抱き寄せて、頭を撫でて、貴晴さんはそう言った。

「帰る」

私は彼の胸の中で小さく答えた。

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