幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない


外食はなしだ。そんな雰囲気じゃないし、私のお腹はぐるぐる言うのをやめた。食欲なんて湧きそうになかった。

ソファに座ると、貴晴さんがホットココアのマグカップを手渡してきた。

「…ありがとう」

温かい。

「美味し…」

「良かった」

貴晴さんが私の肩を寄せて、「震えも止まったな」と呟く。
さすさすと撫でられて、私は彼に甘えるように寄りかかった。

「ごめんなさい」

「…あれは不可抗力。 だけど、すっげーイライラする。 気安く触りやがって。あのやろう、絶対許さん」

「私が悪い」

「そうだな。おまえも悪い。ただいるだけで男の視線集めちゃうその容姿とか」

ちがう、そういうことじゃなくて…

「怖かっただろ」

「…怖かった。 まだ、貴晴さんともしてないのに、キス…」

「されたのか!?」

顔を青くして、私の頬を包み顔を上げさせる。
< 98 / 126 >

この作品をシェア

pagetop