すずらんに幸あれ!

またもやめるちゃんは、たまたま近くの席にいる1年生の男の子に話しかける。

男の子は「は、はいっ!」と慌てて席を立った。


「めるちゃんっ!!(2回目)」


恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。

涙目でめるちゃんの腕を掴むと、「お弁当渡すだけじゃん」と不思議そうな顔で言った。


そうなんだけども。
ただ渡すだけなのだけども!!

なんか、わざわざ呼び出すのもどうかなって…!!

同じクラスの子に渡してもらうってこともあったかなぁ、とか思ったりもして…!!


「お、おい鈴!2年の先輩が鈴のこと呼んでる!!」

「…は?」


すずくんとその周りにいる友人たちの視線が一斉に私たちの方へ向けられる。

注目の的になってしまい、「す、すずくーん…」と蚊の鳴くような声で名前を呼んだ。

すずくんは、驚いたのか少し目を見開いている。


「おまえ、なんで…」

「あっ…お母さんが、すずくんに渡しといてくれって頼まれて…」

「……」


目つきの悪い猫の顔と肉球がデザインされたトートバッグを差し出すと、周りから「えっ、彼女…?」「小鳥遊くんにお弁当?メンタル強っ…」「あの鈴に彼女…!?」とヒソヒソ耳に入ってくる。
< 27 / 46 >

この作品をシェア

pagetop