すずらんに幸あれ!

あぁ、早くこの場から逃げ出したい…。

顔を上げられずに足下を見ていると、「…おい」とすずくんの声が降ってくる。

すずくんは、ひょいっとトートバッグを受け取って、こう言った。


「放課後、ツラ貸せ」

「へっ…」


その光景を見た1年生たちは瞠目しながら「ウソだろ…!?」と騒ぎだす。


「受け取った…!受け取ったぞ…!!」

「鈴が断りもせずに受け取りやがった…!!」

「明日台風来るんじゃね!?」

「じゃあ、あの人はやっぱり彼女…!?」


すずくんは、友人たちの元へ戻っていく。

そして戻った瞬間、友人たちから私との関係について質問攻めに合っていた。


「め、めるちゃん、教室戻ろっ!!」


めるちゃんに声をかけて、脱兎のごとく立ち去る。

まさかこんな恥ずかしい目に遭うなんて思わなかった。

最悪だ。
もう1年の教室には絶対行かない…!!


「やっぱり同居人は小鳥遊 鈴だったんだね〜」

「なんでわかったの!?」

「んー?なんとなく?ねえ、小鳥遊 鈴とのこと詳しく教えてよ〜」

「全然仲良くないから何も話せないよ!!」


すずくんとのことについて誤魔化したのだが、めるちゃんは「教えてってば〜」とニヤニヤと肘をつついてきて、私は「知らないっ!!」と下手な嘘をつき、早足で自分の教室に向かった。
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