すずらんに幸あれ!
「おい、聞いてんのか」
「うぎゃあっ!!??いいい、いつの間に…!?」
「うるせえな。そんな驚くことねえだろ」
「いや、驚くわ!!まるで最初から人間を驚かすために待機して地面に寝転んでる道端のセミと同じくらい驚いた!!!」
「どんな例えだよ…」
面倒くさそうに眉をひそめるすずくんとは反対に、私は恐怖で高鳴る心臓を落ち着かせることで必死だった。
「……っ、き、きみにツラを貸す時間はないので帰ります!さようならっ!!」
「おい、待てよ。何で今日の朝、わざわざ弁当届けに来たのか答えろ」
「はい??」
「連絡してくれればあんな騒ぎにもならなかった。俺が時間ずらして家を出た意味なかったじゃねえか」
「えぇ…??」
言っている意味がいまいちよくわからなかったが、これだけは答えられる。
「私、すずくんの連絡先持ってないから何も送れませんけど?」
「…っ!」
盲点だったのか、すずくんは、ハッと気づいたかのような表情で目を見開いた。
口には出さず、表情に出るタイプの人なのだろう。
彼が今何を考えているのか、すぐに理解できた。