すずらんに幸あれ!
「まあ、別に連絡先交換するほどの仲でもないし、これからは家出る前に口頭で何か伝えればいい話でしょ?……あっ、お昼ごはん、お弁当がイヤならお母さんに伝えとくけど、どうす──…」
「花岡さん」
「うぎゃあっ!!??」
真後ろから名前を呼ばれて、本日2回目の叫び声を上げてしまう。
振り向くと、いつぞやの何度も告白をしてくるしつこい男が目の前に現れた。
私のオーバーなリアクションに、男はムッとして「何ですか、その反応。まるでお化けを見たかのような驚き方じゃないですか」と不服そうに言った。
「おい、あいつと俺、どっちの方が驚いたか言え」
「あっち!」
「そうか…」
すずくんは他校の生徒の方を向いて、私とその男の間に割って入るように立ちはだかる。
「おい、ストーカー野郎。お前は何で蘭のこと好きなのか答えろ」
「おや、彼氏さん。良い質問をしますね」
「……」
この人、すずくんが私の彼氏(ウソ)なの完全に信じている。
あと、『ストーカー野郎』って呼ばれたのに否定はしないんだ…。