すずらんに幸あれ!
「僕が花岡さんに恋をしたのは、去年の冬───…12月頃だったでしょうか…。寒空の下、雪が降り積もっていく中、僕は駅前の広場のベンチで1人泣いておりました。大粒の涙をこぼし、寒さで手が悴んで体が震えていた時です。ある1人の女性がポケットティッシュとカイロをくださりました。その女性は優しく微笑んで『風邪、引かないでくださいね』とだけ残して立ち去って行ったのです。その瞬間、僕の心の中にストンッと何かが落ちる音がしました。彼女の後ろ姿につい見惚れてしまったのです。『なんて素敵な方なのだろう…』と僕は思いました。あぁ、これが恋なのか。僕は恋をしてしまったのか。その女性は制服を着ていたので、他校の方なのだとすぐにわかりました。そして次の日、放課後に彼女が通っている学校へ行くと、僕は一目惚れをした方を見つけました。恋というものは本当に素晴らしいですね。沢山の生徒が正門から出てくる中、僕は一瞬で彼女を見抜くことができたのですから。僕が恋をした相手、その女性こそがあなただったのです。花岡さんだったのです…!!」
「長話を最後まで聞いてくださり、ありがとうございました」と男は丁寧にお辞儀をした。
「…だとよ。おまえは身に覚えあんのか?」