まあ、食ってしまいたいくらいには。
今日はとりあえず下見ということで、なにも持たずに部屋を出た。
「あ、勝手に部屋に入らないでくださいね?金目のものなんてどこを探してもないですし、あったらむしろ教えてほしいくらいですから。
じゃ、おやすみなさい。学生手帳、届けてくれてありがとうございました」
一緒に追い出した愔俐先輩に釘を刺すことも忘れずに。
さてと。
どうせなら娯楽室だけじゃなくて寮の中を探索してみよう。
初日に三栗くんが口頭で説明してくれたけど、自分の目で見て回ったことはなかったから。
いざってときに知っておいたほうが身のためになるかもだし。
さいわい記憶力には自信がある。
寮の間取りを覚えるくらい朝飯前だ。
わくわくしながら行こうとしたとき、「おい」と呼び止められた。
「血はもう止まったのか」
「え? ああ、昼間の鼻血のことですか?そんなのとっくの昔に止まりましたよ」
愔俐先輩はひと呼吸置いて、そうか、とだけ呟いた。
あ、これ、この人、狙ってたな。