まあ、食ってしまいたいくらいには。


強制的に生徒会室から連れ出されたわたしは、さっきの燃え上がるような怒りとは一転、消沈した気持ちでとぼとぼと三栗くんのとなりを歩いていた。

見かねた三栗くんが声をかけてくれる。



「桃、あんまり気にしなくていいよ。あの先輩は誰に対してもああだから」

「でも……わたしはとくに嫌われてる。女で、ケーキだから。ポンコツだから」

「ポンコツは否定できないけど」


そこは否定してほしかった。



「多分そんなに簡単な話じゃないんだよ」

「え?」

「嫌いとかじゃなくて、どう接したらいいのかわからないように見えるな。向こうの肩をもつわけじゃないけど、不器用なんだよ、あの人も」


三栗くんがこちらを向いてほほ笑んだ。


あ、と思う。

どこか陰のある表情に察してしまった。


……一線をひかれてしまった。

ケーキとフォークの線引きを、された。


ショックよりも納得のほうが強かったのは、わたしも心のどこかでは諦める……ううん、わかっていたからかもしれない。



やっぱり
ケーキとフォークはわかり合えないんだ。

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