まあ、食ってしまいたいくらいには。


……いやでも、そうだよね。

今のでわたしも少し正気に戻った。


帰る家があるのなら、迷わず帰るべきだと思う。

おかえりって言葉は当たり前じゃない。

ただいまも言えるうちにたくさん伝えるべきだ。


バカだな……わたし。

自分のことを優先しようだなんて。



「ごめ──」

「奈良町、お前もどこか行けばどうだ。寺修行でしつけ直してもらえ」

「ふざけんな、テメーがどっか行け。……いい施設知ってんだよ。その女諸共ぶち込んでやろーか」

「ほらもう喧嘩になってる!」



そうして芽野くんと三栗くんは帰省していった。


後ろで言い合っているバ……ごほん、先輩たちをBGMにしながら、わたしはふたりの姿が見えなくなるまで手をふりつづけた。

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