まあ、食ってしまいたいくらいには。
ここはすぐさま地獄と化すだろうと思っていた。
わたしと愔俐先輩と奈良町先輩、よりによって相性最悪な3人だけの寮生活。
何も起きないはずがなく──……になるじゃん絶対!
ああもう、やだようやだよう。
わたしも帰る家がほしいよう。
そうやって最初こそ部屋に閉じこもってばかりだったけど、案外意外とふたりの争う声が聞こえてくることもなく、愔俐先輩が部屋にやってくることもなかった。
そう、つまり、とても平穏な日々だった。
だからわたしも警戒心を解いた小動物よろしく、数日が経った頃にはひょっこり顔を部屋から出して辺りをうかがい。
そのまた数日後には食堂で堂々とごはんを食べるようになった。
「お前はずっと寮から出ないつもりか」
久しぶりに愔俐先輩にエンカウントしたのは、お昼に茹でたお蕎麦を食べているときだった。
いきなり現れたものだからもう少しで咽せそうになって、
「んふぅ」
結局、咽せてしまった。
汚いものを見る目で見られる。