まあ、食ってしまいたいくらいには。


「けほ…うぇ、は、吐き出してはないですから……!」


というか先輩が急に話しかけるから悪いんだ。

しかも、さっきなんて言ったこの人?



「ずっと寮から出ないつもりか、って? そんなのわたしの勝手でしょう。てかこわっ、なんで把握してるんですかわたしの行動を」


まさか部屋に盗聴器とかカメラを仕掛けられてないだろうな。

戻ったらいちおう確認してみよう、愔俐先輩ならやりかねない。



「わたしが寮にいたら不都合でも?」

「いや、逆だ」

「……それってつまり」


愔俐先輩はなにも言わなかったけど、察してしまった。


やっぱりこの人、わたしが余計なこと言わないように監視してる。

愔俐先輩たちがフォークだってことを他の人に口走らないように。


いわないって契約したはずなのに。
というか、そんなこと、いわないのに。

それなのにこんなふうに警戒されているのだとしたら、それはそれで心外だった。

わたしだって向こうを警戒はしているけど、それは自分の身を守るためであって……


そこまで考えて、あ、と思った。


フォークだって、自分がフォークであることがバレて得することはなにもない。


ケーキはケーキだと知られたところで同情されるか、悪くても自分に飛び火しないように離れられるだけだ。

いや、だけってことでもないけれど。それでもケーキ自体が危険視されることはほとんどない。


だけどフォークは違う。

自分たちに危害は加えられないと分かっていても、ケーキだけでなく関係のない一般人からも警戒される。

もしかしたら、なにもしてないのに逆に傷つけられることだってあるかもしれない。


ケーキは危険と隣り合わせで生きているけど、フォークだってそれは同じだったんだ。

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