まあ、食ってしまいたいくらいには。


わたしもずっと寮に籠もりっきりなわけじゃない。

ここ数日は暑すぎて外に出られなかったけど、今日はひさしぶりにお出かけするつもりだった。


半ば自慢するように愔俐先輩にそのことを話すと、表情こそ変わらないもののどこか温度の低い視線をぶつけられる。



「誰とだ」

「えっ、なに、なにその愛が重い彼氏みたいな質問……」

「男とか」

「いや、え、違いますよ。ひとりで行くんです」



決して友だちがいないわけじゃない。

ほの空ちゃんは夏休みは毎年、家族で海外に行っている。

そしてあの子も部屋から出たのはもうずっと昔のこと。


だから、友だちがいないわけじゃない。決して。



「それに慣れてますから、ひとりでいるのも。好きなところに好きなだけ居られるのってぼっちの特権じゃないですか?」



あ、ぼっちって自分で言っちゃった。

< 118 / 236 >

この作品をシェア

pagetop