まあ、食ってしまいたいくらいには。
すると愔俐先輩は少し考えるように眉間を寄せたあと、
「あいにく俺は用があって同行できないが」
「いやだから、わたしの話きいてました?」
全然ひとりでいいんだってば。
というかひとりで行かせてください。
外にいるときまで監視されるなんてまっぴらごめんだ。
そう伝えようとしたとき、食堂に奈良町先輩が入ってきた。
寝起きなのか怠そうにしていた奈良町先輩は、わたしたちの姿を見るなりもっと顔をしかめた。
また言い争いになる……
と、身構えたとき。
愔俐先輩がわたしを指差した。
「ちょっと人を指差さ──」
「よかったな」
言葉をさえぎった愔俐先輩が、次いでその長い指で差したのは
「会計はフリーだ」
「……あ?」
我関せずと冷蔵庫から水を取り出していた奈良町先輩だった。
わたしは思わず笑ってしまった。
それはさすがに冗談だろう、と。
天地がひっくり返ってもついてきてくれるわけがない。
もちろん反論しかけた奈良町先輩に、愔俐先輩が耳元でなにかを囁いた。
なにを言ったのかは分からなかったけど、奈良町先輩は心底嫌そうに息を吐き出したあと食堂を出て行こうとした。
「おい」
ぼんやりとそれを見つめていれば、振り返った奈良町先輩に鋭く睨みつけられて。
「てめえ、さっさと準備してこい」