まあ、食ってしまいたいくらいには。
制服の襟をつかまれ、無理やり持ちあげられている。
わたしは膝立ちのまま、愔俐先輩をひきはがそうとしたけれど、恐怖で手に力が入らなくて。
「や、やめっ……、ん、ぁ」
じわりと広がっていく甘い痛みに、あふれる涙。
もう終わりだ、そう思ったときだった。
「……なるほどな」
愔俐先輩がいきなり手を離した、から。
ふたたび地面に放り出されたわたし。
あわてて顔をあげると、そこには手があった。
手が、わたしに向けられていた。
「え…な、なに……?」
「契約だ」
「けいやく……契約?」
わけがわからない。
どうなってるの?
わたしはこのまま食べられるんじゃないの?
「お前をフォークから守ってやる」
その言葉に目を見開く。
フォークが、ケーキを、守る?
そんなことありえない。
だって、ケーキとフォークだよ?
今こうして会話ができていること自体、おかしいのに……。