まあ、食ってしまいたいくらいには。


「その代わり、お前はその身を差し出せ」

「は……わたしに食われろってことですか」



すると、愔俐先輩はふっと鼻で笑った。


優劣なんて火を見るよりも明らかだ。


この場を、ケーキを、支配しているのは────




「お前はただのケーキじゃないんだろう」



バカ、数分前のわたしのバカ。

なにが最後の砦だ。

むしろ逆手に取られてるじゃないか。


でも、もしも……食べられないのだとしたら?

フォークに狙われる心配がなくなるとしたら?


……なんて。

ごちゃごちゃ考えたところで、きっともう、わたしに拒否権なんてものはない。



だってわたしはケーキで、この人はフォーク。


それをお互いに知ってしまったのだから。





「わかり、ました」



重ねたその手は大きくて無骨で。

それこそフォークのように冷たくて。



ぐんと強い力で起こされたときは、思わず悲鳴がもれそうになった。


ま、まだ腰に力が入らないのに……!

< 14 / 236 >

この作品をシェア

pagetop