まあ、食ってしまいたいくらいには。
「その代わり、お前はその身を差し出せ」
「は……わたしに食われろってことですか」
すると、愔俐先輩はふっと鼻で笑った。
優劣なんて火を見るよりも明らかだ。
この場を、ケーキを、支配しているのは────
「お前はただのケーキじゃないんだろう」
バカ、数分前のわたしのバカ。
なにが最後の砦だ。
むしろ逆手に取られてるじゃないか。
でも、もしも……食べられないのだとしたら?
フォークに狙われる心配がなくなるとしたら?
……なんて。
ごちゃごちゃ考えたところで、きっともう、わたしに拒否権なんてものはない。
だってわたしはケーキで、この人はフォーク。
それをお互いに知ってしまったのだから。
「わかり、ました」
重ねたその手は大きくて無骨で。
それこそフォークのように冷たくて。
ぐんと強い力で起こされたときは、思わず悲鳴がもれそうになった。
ま、まだ腰に力が入らないのに……!