まあ、食ってしまいたいくらいには。
奈良町先輩がわざわざわたしの前を通り、どかりとソファに腰かける。
言動こそ乱暴なものの、そこまで不機嫌そうではなかった。
というのも、生徒会では実質この人が次席。
むしろ愔俐先輩が不在の生徒会室で悠々自適にしていた。
気を取り直して、芽野くんの口にケーキを運ぼうとしたとき。
「あの~自慢の長い脚が当たってますけど」
「収まりが悪ぃ」
「二つに折ってあげましょうか?」
なんなのこの人、めっちゃ邪魔してくるじゃん。
ソファがわたしの隣しか空いてなかったことがそんなに嫌だったのかな。
ほの空ちゃんが風邪で休みじゃなかったらわたしも教室で食べてたよ。
そんなわたしとは違って他の生徒会メンバーは、
お昼は大抵ここにいた。
彼らにとってはこの生徒会室が安全地帯なんだ。
あからさまに教室にいないと怪しまれる可能性もあるから、適度に他の生徒の前で食べているところを見せるらしい。
いま思えば、わたしも三栗くんがフォークだと思わなかったのは教室で食べているところを見たことがあるからだった。