まあ、食ってしまいたいくらいには。
考えに耽りながらも、奈良町先輩の足を押し返していると。
「桃とメイちゃん先輩、ずいぶんと仲良くなったようだけど」
わたしの斜め前から、それまでずっと黙っていた三栗くんがからかうように訊いてくる。
「やっぱり、休みの間になにかあった?」
やっぱり、ということは。
ずっと思ってはいたんだろう。
その証拠に、冗談交じりの瞳には探るような色もあった。
わたしが答えるより早く、奈良町先輩が間髪入れずに返した。
「別になんもねえよ。あとその呼び方やめろ」
こくこく、合わせるようにうなずく。
一緒に徹夜してジブリを観明かした、ことも。
バラしたら怒られそうなので言わないでおいた。
三栗くんはそれ以上、追求はしてこなかった。
「ああ、これは食べやすいな」
「ほんと?よかったあ、これ購買で売ってるからね」
結局、自分の手でケーキを食べた芽野くん。
咀嚼してすぐに、ぱっと顔色を明るくさせた。
どうやら生地がしっかりしていて食べやすいらしい。
「ね、よかったら明日一緒に買いに行かない?」
「購買に?」
「うん。個数に制限があって1人1個しか買えないからさ」
2人で行けば芽野くんが食べられるチーズケーキは2個になる。
いつもはお昼も忙しそうな芽野くんだけど、明日はちょうど用事がないらしく。
ふたつ返事で了承してくれた。